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~プロデュース・マネジメント~

『組織マネジメントの研究Vol.19』【マネジメントの戦略①】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

15.マネジメントの戦略①

【1】規模のマネジメント
●規模と複雑さ
組織が大きくなれば、その中身の大部分は外部環境から遠ざかる。そのため、組織の生命に不可欠な栄養素を供給すべき内部機関が複雑になる。こうして規模は複雑さを左右する。逆に、複雑さもまた規模を左右する。

●規模と戦略
規模は戦略に影響を及ぼす。逆に戦略も規模に影響を及ぼす。小さな組織は、大きな組織にはできないことがある。小さな組織は、単純で反応が早く機敏である。資源を重点的に投入できる。もちろん大きな組織には、小さな組織にはできないことができる。組織には、それ以下では存在できないという最小規模の限界が産業別、市場別にある。逆に、それを超えると、いかにマネジメントしようとも繁栄を続けられなくなるという最大規模の限界がある。

●規模とは何か
適切な規模を知るには、従業員数、売上高、付加価値、製品、市場、技術、産業構造を見なければならない。いずれも単独では決定要因とはならない。

しかし、規模の適切さをかなり正確に示す一つの基準がある。小企業では、中心的な成果に責任を持つ者が誰かわかる。一人の人間が本当によく知ることのできる人間の数が、最大12から15人である。

中企業では、社長はもはや、組織の本当に重要な人間全員を識別し知ることはできない。そのためには三人ないし四人の人間が必要である。中企業の社長は、中心的な人間の名前を聞かれると、トップマネジメントの同僚を何人か呼び、相談して答える。中企業では、成果を左右する存在として知られている中心的な人間の数は、40人から50人である。

これが大企業になると、組織図や記録を調べなくては、決定的に重要な人間が誰であり、どこにおり、前に何をやり、現在何をしており、これからどのような道をたどることになりそうかはまったくわからない。

●小企業のマネジメント
小企業と大企業は択一的な存在ではなく、補完的な存在だった。小企業は、大企業以上に組織的且つ体系的なマネジメントを必要とする。小企業は、高度のマネジメントを必要とする。小企業は戦略を必要とする。小企業は際立った存在となるための戦略を持たなければならない。機会ではなく問題に追われて日を送るからこそ小企業の多くが成功できない。

小企業のマネジメントに必要とされていることは、
「われわれの事業は何か、何であるべきか」を問い、答えることである。
トップマネジメントの役割組織化することである。

●中企業のマネジメント
中企業は多くの点で理想的な規模である。大企業と小企業双方の利点に恵まれている。誰もがお互いを知っており、容易に協力できる。チームワークは特別に努力しなくともひとりでに生まれる。誰もが、自らの仕事が何であり、期待されている貢献が何であるかを知っている。資源は十分にある。したがって基本的な活動を継続することも、卓越性が必要な分野で他に秀でることもできる。規模の経済を手にするだけの大きさもある。それは、マネジメントする規模がもっとも容易な規模でもある。

中企業とは、特定の重要な分野において、リーダー的な地位にある企業である。この地位を維持することこそ、中企業にとって成功の鍵である。要するに、中企業は持てる資源のすべてをあげて、成功の基盤となっている分野を確保することが要求される。そうでない分野で、抑制と禁欲が要求される。

●大企業のマネジメント
トップマネジメントの人間が、もはや自社の中心的な人間を個人的に知ることのできない企業は、規模に関するかぎり最終段階に達したといえる。大企業はフォーマルな組織を適切につくりあげなければならないし、その組織構造は明快でなければならない。全員が目標、優先順位、戦略を知らなければならない。組織内における自らの位置と、他の人間との関係を知らなければならない。さもなければ、官僚組織に堕し、成果をあげるよりも慣例を守ることに汲々とし、手続き生産性と取り違えるようになる。

大企業は高度に構造化され、複雑で、しかもフォーマルである。機動性を欠く。大企業は、原則として、小さな事業、成功しても中ぐらいの事業にさえ育ちそうもないものには手を出すべきではない。

大企業のマネジメントには、小さな事業に必要な感覚がない。大企業は小さな事業を理解できない。したがって、まちがった決定を行う。だが大企業といえども、革新を行うには冒険的な事業には手をつけなければならない。

●己を知る
多くの企業は適切な規模を知らない。規模にふさわしい戦略や構造については、さらに知らない。事実、成果と業績に関係のない分野で、費用のかかるスタッフを抱えている小企業は多い。あまり意味のない活動、製品、市場に自らの資源を投入している中企業も多い。トップマネジメントが自社を幸せな一家と錯覚している大企業も多い。企業は自らの規模を知らなければならない。同時に、その規模が適切か不適切かを知らなければならない。

●不適切な規模
規模の誤りは、組織にとって体力を消耗させる業病である。治療は可能だが、簡単でもなければ楽でもない。

大規模では生きていけない産業がある。その一例が出版業である。

大企業と小企業では繁栄できるが、その中間の中企業では規模が不適切な産業がある。一例がアメリカの航空会社である。中規模の国内航空会社は、幹線航空会社の収入をあげるには小さすぎ、地方航空会社の経済性を発揮するには大きすぎる。

なぜ不適切かは不明でも、不適切なことを知るための診断は容易である。兆候ははっきりしている。常に同じである。不適切な規模の組織には、肥大化した分野、活動、機能が必ずある。しく努力を必要とし多額の費用も必要としながら、成果をあげられない分野がある。他の分野でいかに利益をあげても、その肥大化した分野がそれ以上を吸い取る。

●不適切な規模への対策
通常、不適切な規模の組織におけるマネジメントの反応は、肥大化した分野、活動、機能を支えるべく、売上げを増やそうとすることである。均衡を図るために成長を図る。それは一か八かの戦略である。そのような戦略であるは最後の手段でなければならない。

この問題に取り組むには三つの戦略がある。

①第一の戦略は、事業の性格を変え、何らかの特徴を身に着ことである。
不適切な規模の組織は、存続と繁栄に必要なニッチを持たない企業である。この戦略は実りは大きいが実行困難なものである。だが、これは危険な戦略でもある。失敗するだけでなく、成功しても何も変わらない危険がある。

アメリカン・モーターズは、50年代初めコンパクトカーを発表した。大成功を収め、数年間は利益をもたらした。だが、それは一時の勝利だった。

事業の質的な変化を検討するうえで必要なことは、「成功の見込みはどのくらいか」を問うことであり、「成功は答えになるか、自体を悪化させるだけか、真に永続的な特徴を与えてくれるか」を問うことである。

②第二の戦略は、合併と買収である。
それほど危険ではない。実は、規模の不適切さは、合併と買収の検討が必要となるケースとなる数少ないケースの一つである。合併と買収は量を狙ってはならない。不適切な基盤の上に量を加えることは、さらに問題を求めることでしかない。手持ちのものと合わせて完全な全体となるような相手を見つけ出すことでなければならない。それは、逆の理由で規模の不適切さに悩んでいる企業を見つけることである。したがって、合併と買収は、、規模の不適さの原因を知ることが前提となる。原因を知り、適切な組み合わせを実現するならば、問題の解決は急速かつ完璧である。

③第三の戦略は、売却切り捨て縮小である。
マネジメントにとっては好ましくない戦略である。しかし、これはあらゆる点でもっとも成功しやすい戦略である。可能なときには、常に採用すべき戦略である。リーダー的な地位という強固で安定した基盤から多くの分野へ進出した末に規模の不適切さに悩んでいるのであれば、この戦略を採用すべきである。規模の大きさは、成功や成果の指標ではない。マネジメントの能力の指標でもない。大きさではなく適切さが、それらの指標である。

●最大規模と最適規模
組織には、それ以上大きくなると成果をあげる能力が低下するという最適規模がある。巨大企業のなかには、すでにその最適規模を超えているものがある。最適規模は、最大規模よりもかなり下にある。そのような企業は自らを分割すべきである。

●規模と地域社会
実は、規模についての最大の問題は組織の内部にあるのではない。マネジメントの限界にあるのでもない。最大の問題は、地域社会に比較しておおきすぎることにある。

地域社会との関係において行動の自由が制約されるために、事業上あるいはマネジメント上必要な意思決定が行えなくなったときには、規模が大きすぎるとみるべきである。地域社会に対する懸念から、自らとその事業に害を与えることが明白なことを行わなければならなくなったときには、規模が大きすぎると見るべきである。

問題は相対的な大きさである。単一企業、単一雇用主は、企業そのものにとっても、地域社会にとっても不健全である。そのような企業にとって最低限必要なことは、その地域では事業を拡大せず、事態を悪化させないこおである。これは社会的責任ではない。事業責任である。

規模の不適切さは、トップマネジメントの直面する問題のうちもっとも困難である。自然に解決される問題ではない。勇気、真摯さ、熟慮、行動を必要とする。

 

要点整理

◆規模のマネジメント
●規模と複雑さ
組織が大きくなれば、組織の生命に不可欠な栄養素を供給すべき内部機関複雑なるため、中身の大部分は外部環境から遠ざかる。

●規模と戦略
規模は戦略に、戦略も規模に影響を及ぼす。小さな組織は、単純で反応が早く機敏である。資源を重点的に投入できる。組織には、最小規模及び最大規模の限界が産業別、市場別にある。

●規模とは何か
適切な規模を知るには、従業員数、売上高、付加価値、製品、市場、技術、産業構造を見なければならない。規模の適切さをかなり正確に示す一つの基準がある。一人の人間が本当によく知ることのできる人間の数が、最大12から15人である。

●小企業のマネジメント
・大企業以上に組織的かつ体系的なマネジメントを必要とする。
・小企業は、高度のマネジメントを必要とする。
・小企業は際立った存在となるための戦略を持たなければならない。
機会ではなく問題に追われて日を送るからこそ小企業の多くが成功できない。

小企業のマネジメントに必要とされていることは、
「われわれの事業は何か、何であるべきか」を問い、答えることである。
トップマネジメントの役割組織化することである。

●中企業のマネジメント
中企業は多くの点で理想的な規模である。
チームワークは特別に努力しなくともひとりでに生まれる。
・誰もが、自らの仕事が何であり、期待されている貢献が何であるかを知っている。
資源は十分にある。したがって基本的な活動を継続することも、卓越性が必要な分野で他に秀でることもできる。
規模の経済を手にするだけの大きさもある。
マネジメントする規模もっとも容易な規模でもある。
・中企業とは、特定の重要な分野において、リーダー的な地位にある企業である。この地位を維持することこそ、中企業にとって成功の鍵である。要するに、中企業は持てる資源のすべてをあげて、成功の基盤となっている分野を確保することが要求される。

●大企業のマネジメント
トップマネジメントの人間が、中心的な人間を個人的に知ることのできない規模最終段階に達したといえる。
・大企業はフォーマルな組織適切につくりあげなければならないし、その組織構造明快でなければならない。
全員目標優先順位戦略を知らなければならない。
・組織内における自らの位置と、他の人間との関係を知らなければならない。さもなければ、官僚組織に堕し、成果をあげるよりも慣例を守ることに汲々とし、手続き生産性と取り違えるようになる。

●己を知る
多くの企業は適切な規模を知らない。規模にふさわしい戦略構造については、さらに知らない。

●不適切な規模
規模の誤りは、組織にとって体力を消耗させる業病である。治療は可能だが、簡単でもなければ楽でもない。不適切な規模の組織には、肥大化した分野、活動、機能が必ずある。

不適切な規模への対策
この問題に取り組むには三つの戦略がある。

①第一の戦略は、事業の性格を変え、何らかの特徴を身に着けることである。
②第二の戦略は、合併と買収である。
③第三の戦略は、売却切り捨て縮小である。

☆規模の大きさは、成功や成果の指標ではない。マネジメントの能力の指標でもない。大きさではなく適切さが、それらの指標である。

●最大規模と最適規模
組織には、それ以上大きくなると成果をあげる能力が低下するという最適規模がある。最適規模は、最大規模よりもかなり下にある。そのような企業は自らを分割すべきである。

●規模と地域社会
問題は相対的な大きさである。単一企業単一雇用主は、企業そのものにとっても、地域社会にとっても不健全である。そのような企業にとって最低限必要なことは、その地域では事業を拡大せず、事態を悪化させないこおである。

 

所 見

●大きければよいのか
『規模の大きさ』を成果指標としたり、社会的評価の対象とする風潮がまだまだある。経営コンサルタントの類の会社でもそれらを成功している組織の根拠とするところが少なくないように思う。しかしながら、ドラッガーが「規模の大きさは、成功や成果の指標ではない。マネジメントの能力の指標でもない。大きさではなく適切さが、それらの指標である。」と述べている通り、規模で評価をすることは根本的に間違えている。普通に考えればわかることだが、産業毎、市場毎に最適な規模が異なる。最小、最大の規模の限界が異なる。

●キーパーソンがすぐわかる組織
ドラッガー曰く、一人の人間が良く知ることのできる人数は12~15人とのことだが、あたっていると思う。トップマネジメントの視点で、組織内にどれだけ深く知っている人物がいるかということはとても重要なことだ。小企業では、やろうと思えばほぼ全員、もしくは最低でも中心人物たるキーパーソンは把握できる。中企業から大企業になると人数が多すぎて中心人物たるキーパーソンがだんだんとわからなくなるということだが、まさに大きくなることの弊害である。良く知っているキーパーソンと瞬時にコミュニケーションをとれるか否かということは、重要なことを相談し、適切に意思決定し、行動に移すスピードに関わる。それは、組織としての生命線に直結する。

●なぜ、小企業に高いマネジメント能力が必要なのか
組織が大きければ大きいほど、高いマネジメント能力が必要だと思いがちだが、ドラッガーが述べている通りそうではないと思う。小企業は何もしなければ、そのまま無機質な存在として何らの特色も出せないまま社会に埋没してしまう。小企業のマネジメントにとって、少ない人数で最大のパフォーマンスを引き出す能力が要求される。余すことなく、一人ひとりの強みを引き出し、生産的なものにかえ、結集させるマネジメントが必要となる。全員が自覚と責任をもち、マネジメントの担い手となることが必要である。また、卓越した存在となるために、特有の使命を徹底して掘り下げる必要がある。そして、戦略、戦術をもって総力戦で行動していく構えが必要である。また、問題ばかりに目を向けるのではなく、機会に目を向け挑戦し続ける姿勢が必須である。やり方によっては、より大きな組織以上に、社会に対して強いインパクトを与える存在となる。小企業のマネジメントほど、リーダーの資質が問われ、結果がダイレクトに表れるものはない。

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