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~プロデュース・マネジメント~

『自己マネジメントの研究Vol.1』《人生を成功に導く7つの教訓》


今回から、ドラッガーの『プロフェッショナルの条件』の中でも、当研究所の事業としても重要な論点となる自己マネジメントセルフマネジメントについて書かれた部分、関連する部分をシリーズで研究していきます。

テーマ毎のまとめ(プロフェッショナルの条件/P.F.ドラッガー)

1.自らをマネジメントする

【1】私の人生を変えた七つの経験
私の人生において、成果をあげられるようにし、成長と変化を続けられるようにしてくれた教訓、過去の囚人となることなく成長することを可能にしてくれた七つの経験について紹介したい。

①目標とビジョンをもって行動し続けること。
努力を続けることこそ、老いることなく成熟するコツである。

「いつも失敗してきた。だから、もう一度挑戦する必要があった。」(byヴェルディ)
→19世紀の作曲家ヴェルディが80歳になっても尚オペラの作曲を続けることについて答えた言葉

②神々しか見ていなくとも、完全を求めていくこと。
仕事において真摯さを重視する。誇りをもち、完全を求めるということである。

「あなたの作品の中で最高のものはどれか」とよく聞かれる。そのときには、次の作品です。と本気で言っている。ちょうど今、二冊の本を構想し、実際に書き始めている。その二冊とも、これまでのどの本よりも優れたもの、重要なもの、完全に近いものにしたいと思っている。

「彫像の背中は見えない。誰にも見えない部分まで彫って、請求してくるとは何ごとか」(by会計官)
「そんなことはない。神々が見ている。」(byフェイディアス)
→紀元前440年頃、ギリシャの彫刻家フェイディアがアテネのパルテノンの屋根に建つ彫像群を完成させた。その
後の請求に関するアテネの会計官とフェイディアスのやりとり。

③日常生活に継続学習を組み込み、一つのテーマごとに集中して勉強し続けること。
常に新しいことに取り組むこと。自らに対し、常に優れたことを行うことを課すこと。さらに、新しい方法で行うこと。

私は、一時に一つのことに集中して勉強するという自分なりの方法を身に着けた。今でもこの方法をやっている。次々に新しいテーマを決める。統計学、中世史、日本画、経済学など。それらのテーマを完全に自分のものにすることはできない。しかし、理解することはできるようになる。

④定期的に検証と反省を行うこと。
自らの仕事ぶりの評価を、仕事そのものの中に組み込むこと。毎週末、半年ごと、新年に。

私は毎年夏になると、二週間ほど自由な時間をつくり、それまでの一年を反省する。そして、コンサルティング、執筆、授業のそれぞれについて、次の一年間の優先順位を決める。

⑤新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないかと自問すること。
新しい仕事は必ず前の仕事と違う何かを要求する。新しい任務で成功するうえで必要なことは、卓越した知識や卓越した才能ではない。それは、新しい任務が要求するもの、新しい挑戦、仕事、課題において重要なことに集中することである。

あらゆる組織において、人材の最大の浪費は昇進人事の失敗である。昇進し、新しい仕事をまかされた有能な人たちのうち、本当に成功する人はあまりいない。無惨な失敗例も多い。もちろん一番多いのは期待したほどではなかったという例である。その場合、昇進した人たちは、ただの凡人になっている。昇進人事の成功は本当に少ない。それは、新しい任務についても、前の任務で成功していたこと、昇進をもたらしてくれたことをやり続けるからだ。間違った仕事の仕方をしているために、そうなっている。

⑥目標と期待する結果を書き、実践した上でフィードバック分析を行うこと。
この方法は、「自分は何がよくできるか、何が強みか」、「何を学ばなければならないか、どのような癖を直さなければならないか」、「どのような能力が欠けているか、何がよくできないか」、「何について改善する必要があるか」、「いかなる改善が必要か」、「自分ができないこと、したがって行おうとしてはならないこと」も教えてくれる。そして、まさに「自らの強みが何か」を知ること、「それらの強みをいかにしてさらに強化するか」を知ること、そして「自分には何ができないか」を知ることこそ、継続学習の要である。

⑦何によって人に知られたいかを考えること。
一つは、人は、何によって人に知られたいかを自問しなければならない。二つ目は、その問いに対する答えは、歳をとるにつれて変わっていなかければならない。成長に伴って変わっていかなければならない。三つ目は本当に知られるに値することは、人を素晴らしい人に変えることである。人を変えることができなかったら、何にも変えたことにはならない。

前提すべきもっとも重要なこと
成果をあげ続け、成長と自己変革を続けるには、自らの啓発配属に自らが責任をもつということである。

人事部は変わらなければならない。それは、人事の決定者ではなく、教師、道案内、相談相手、助言者とならなければならない。

知識労働者の啓発やその配属についての責任は、本人にもたせなければならない。「どのような任務を必要とするか」、「どのような任務の資格があるか」、「どのような経験や知識や技能を必要としているか」との問いを発する責任は、一人ひとりの人間自身に課さなければならない。

人事の最終決定は、本人の事情と組織そのもののニーズとの関係において行われなければならない。そして、その人間の強みや能力や仕事ぶりについての客観的な判断に基づいて行われなければならない。

一人ひとりの人間の啓発は本人の責任としなければならない。配属の責任も、本人の責任としなければならない。さもなければ、知識労働者がいつまでも成果をあげ、生産的であり続け、成長し続けることは到底望みえない。

 

所 見

◆神々しか見ていなくとも、完全を求めていくこと。
(1)一流の人々は完全なものを求める

「見えないところも完全に」という考え方は、一流の世界で見られる。私が思いついたのは、二つある。一つはアップルの創業者スティーブ・ジョブズに見られるもので、一切の妥協を許さず完成されたものを追い続ける姿勢である。末端のユーザーが見ないであろうパソコンの裏側の配線などにも気を配った。スタッフに対しても、イメージしたものができなければ、何度でもダメ出しを続けたという。二つ目は、ディズニーランドに見られるもので、夢を売る世界の話である。その世界の裏側はどうなっているのか。私の知人の証言によると、やはり、スタッフルームや裏側の倉庫などゲスト(顧客)に見えないところももきれいに整理・整頓されているという。いずれも見えない部分においても美が追求されていたということだ。

(2)私自身の体験談
私自身のことについて少し経験を述べさせていただきたい。常にできていたわけではないし、前述した人物や企業とは比較にならない話ではあるが、いつも自分なりに本物を追求はしてきた。人材育成、フォーラム、マネジメントなど。「なぜ、そこまでやるのか。」「そこまでやらなくても結果は出るのではないか。」「そこまでやらなくても仕事はとれるのではないか。」と言われたこともある。しかし、本物を追求し続けた。言葉としても当時の仲間に「〇〇一を目指そう!」ということを言ってきた。それは、最高のもの、本物を追求し、全ての課題を突破しようという表れだった。社会のためであり、クライアント、相談者のためであり、自分たち自身のためであり、あらゆる事柄において未来に光をあてるためである。やはり、結果としてそれ相応の結果が出た。そして、その結果は何もかも一変させる。自分たち自身の成長、人間としての誇り、社会的評価、要請の高まり、お手本とする人々の増加など。個人的に外部の方々から言われて一番うれしい言葉は、「本物だ」という言葉だった。

(3)一流の人間になろうとすることが最高の結果を生む
一流のプロフェッショナルに見られるのは、一流のもの、最高の物、サービスをつくるためには、一切の妥協を許さない姿勢があるということ。自らが本物であろうという姿勢が必要であり、それが担い手自身に誇りを生み、顧客に感動を与える力につながっていくのだろうと思う。私もそうだが、時々、これくらいでいいか・・・と安易な方、楽な方に流れそうになる。もしくは、過度に自らに負荷をかけすぎて疲れてしまい、そう思ってしまうこともある。しかし、安易な妥協は、癖になる。逆に、一時的に苦しくても、そこを突き抜けて、最高のものをつくり、最高の感動を与えたという経験をもつと、妥協したくてもできなくなる。最高のものを求める人間が最高のものをつくり続けるのは、それが習慣となるからだ。理由は、それが何よりも自らの人間的成長を生じさせることであり、幸福を生じさせることであり、人々に深い感動を生むことができることを体験的に知っているからだと思う。結局は、常に本物を追求し、一流の人間になろうとすることが、一流の結果、最高の結果を生むということになるのだと思う。

 

◆日常生活に継続学習を組み込み、一つのテーマごとに集中して勉強し続けること。
学習しなければいけないことは尽きない。あれもこれも手を出して、全部中途半端になってしまう。そんなことはないだろうか。私も最初はそういうタイプの人間だった。失敗に失敗を重ね続けた。しかし、思い切って、やることを絞ることが重要だと知った。それは集中することが大切であることにつながる。一つのことに集中せず、細切れでやってしまうと、深めていく作業ができない。ゾーンに入ることができない。ちゃんとものにすることができない。5つのことを同時平行して進め1年後に全てやり遂げるのか。一つ一つやり遂げていくのか。後者の方が一つ一つのテーマをより深めることができると思う。そして、やり遂げたという達成感が新たなテーマに向かわせるエネルギー、力の原動力となる。同時並行でやらなければならないこともあると思うが、その場合はやはりできる限り絞った方が良いと思う。

 

◆新しい仕事で成果をあげるには何をしなければならないかと自問すること。
(1)新しい仕事、任務で上手くいかない理由

ドラッガーが述べているように、新しい仕事、ポジション、任務で上手くいかない人は少なくないように思う。一つは、自らの適正に全くあっていないこと。強みではなく、むしろ、弱みで勝負してしまうこと。もう一つは、従来の仕事のやり方をそのまま続けてしまう。従来の習慣をそのまま続けてしまうからだと思う。

(2)自らが新しい仕事、任務でやってきたこと
自らの体験として語れる部分として、マネジメントでもトップマネジメント、ミドルマネジメントでは違う。対人サービス業務と総務・経理業務とでは違う。また、経営分析能力と経理実務能力は全く別のものだ。従来のやり方をそのまま踏襲しようとしても、上手くいかない。私自身が心がけていたのは、いったん全てリセットすること。自らに業務内容、仕事内容を合わせようとするのではなく、自分をそれらに合わせていくこと。そして、その業務のスキルに何が必要かを問い、訓練していくことだ。そして、お手本となりうる人がいたら、スキルに長けている人がいたら、どんどん聞いていくことである。それができないと、一般的には最悪の結果を招くことになる。

(3)人事の不幸はどうしたら無くなるか
ドラッガーは、あらゆる組織において、人材の最大の浪費は昇進人事の失敗である。」と述べている。

人事が上手くいかないパターンはさまざまである。仕事、業務内容が全く違うものになった場合。一職員からミドルマネジメント、すなわち、管理職となった場合。ミドルマネジメントからトップマネジメントになった場合。転勤により、全く違う土地、地域で仕事をすることになった場合。本当にさまざまである。

失敗の要因はいろいろとあると思う。「環境への適応性を欠いていた」、「求められるスキルで十分なものが無かった」、「本人の強みが発揮できなかった又は弱みで勝負してしまった」、「本人がやりがいを感じれない内容だった」、「性格的に管理職の立場が不向きだった」、「責任へのプレッシャーに耐えられなかった」等々。

あくまで一般的な印象だが、人事の側は昇進させたい等どういう思いがあるにせよ、受けてくれるか、くれないかだけが焦点。本人の側は、Yesと言うか、Noと言って居心地を悪くするか、未来の昇進を棒に振るか。そこばかりが焦点で、本人の視点、合理的視点、生産的視点、顧客の視点が欠落していることがほとんどではないかと思う。

ドラッガーは、「自己啓発と配属には、本人が責任をもつようにならなければならない。」一方で「人事部は変わらなければならない」と述べている。私が思うのは、新たな任務、配属先、仕事に就くということは、内部の異動かもしれないが、再就職と同じであり、『マッチングの作業』だと思う。そして、人事においても一番重要視しなければいけないことは、マネジメントの基本・原則であること、すなわち、「人の強みを生産的なものとしていく視点」ではないかと思う。

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