道徳形而上学言論/カント
カント
概要&解説
カントは、近代哲学の祖である。カントがこの本で意図しているのは、道徳の最高原理の探求と確立である。単に『道徳学言論』ではなく、『形而上』を入れているのには理由がある。それは、その原理を感覚や経験を超え出た普遍的な原理とする必要があり、理性的な思惟によって認識する必要があると考えたからだ。カントが形而上学的視点が必要だとする背景としては、俗世間にあふれる道徳が、経験や情意的なものに理性を混ぜあわせたごじゃまぜぶつであり普遍性を伴わないものだからである。本書で彼は、それらを「素性の異なる肢体を寄せ集めてつなぎ合わせた雑種児を道徳性とすり替えたもので、徳の真の姿を眺めたことのある人にとっては、似ても似つかないものである。」と述べている。その究極的な原理に至る原点として最も大切なものが、『善意志』であると述べている。それは、全ての人間に備わっているもので、啓発のみが必要であると述べている。本著は三部構成で論証が展開され、『普遍的合法則性』という道徳の最高原理に到達する。
書評
私が22、3歳の頃、生きるか死ぬかというくらい思い悩んでいた時に、目を覚ます大きなきっかけを与えてくれたのが、この本である。何が正しくて間違っているのか。本物の救いとは何か。人が生きる根本的な核となるものは何か。それがわからず、強烈な孤独を感じ夢遊病者のような日々を過ごしていた。そんな中でも何とか現状から脱却しようと本屋に通っていたが、この本に出合って自分が苦しんでいた原因がわかり、目に見えない根源的な意識の世界、普遍的世界観の大切さを認識することができるようになった。
新書ばかりに目がいきやすいが、古典となる書物の中には、やはり優れたものがある。時空を超えた人物との対話の機会は大変重要であり、魂の叫びがその機会を呼び寄せるのだと感じた。
最近になって、テレビで『ドイツ人の考え方の根底にカント哲学がある』ということを知ったが、やはりそれくらいの大哲学者なのだと思う。
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