『組織マネジメントの研究Vol.2』【企業とは/事業とは】
テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)
3.企業とは何か
●企業=営利組織ではない。
・利益は、企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である。企業活動や企業の意志決定
にとって、その妥当性の判断基準となるものである。
・企業は、高い利益をあげて、初めて社会貢献を果たすことができる。
●企業の目的
・企業の目的は外にあり、社会にある。
・企業の目的の定義は、顧客を創造することである。
・企業は、すでに欲求が感じられているところへ、その欲求を満足させる手段を提供する。
・欲求が感じられていないこともある。イノベーション、広告、セールスによって欲求を
創造するまで、欲求は存在しなかった。(訴求)
・企業とは何かを決めるのは顧客である。顧客が価値を認め購入するものは効用である。
・企業が目的を果たすためには、二つだけの基本的な機能を持つ。
→マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。
●マーケティング・・・顧客を創造する第一の機能
・真のマーケティングは顧客の欲求からスタートする。
・『顧客は何を買いたいか』を問う。
『顧客が価値ありとし、必要とし、求めている満足がこれである』と言う。
・販売とマーケティングは逆である。
・マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。
・マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのず
から売れるようにすることである。
●イノベーション・・・顧客を創造する第二の機能
・新しい満足を生みだす。
・常によりよくならなければならない。イノベーションの結果もたらされるのは、よりよい
製品、より多くの便利さ、より大きな欲求の満足である。
・既存の製品の新しい用途をみつけることもイノベーションである。
→例)イヌイットへの凍結防止のためとして冷蔵庫を売ること。
・イノベーションは発明のことではない。技術のみに関するコンセプトでもない。経済に
関わること。経済的なイノベーション、さらには社会的なイノベーションは、技術のイ
ノベーション以上に重要である。
・イノベーションとは、人的資源や物的資源に対し、より大きな富を生みだす新しい能力
をもたらすことである。
・当然イノベーションは、社会のニーズを事業の機会として捉えなければならい。
●生産性に影響を与える要因
・生産性とは、顧客の創造という目的を達成するための資源を活用する機能のこと。
・生産性要因である労働、資本、原材料に負荷すべき重要な要因とは?
①知識
正しく適用したとき、もっとも生産的な資源となる。
②時間
時間はもっとも消えやすい資源である。
③製品の組み合わせ(プロダクト・ミックス)
製品の組み合わせ、資源の組み合わせ
④プロセスの組み合わせ(プロセス・ミックス)
例)部品を自らつくるのか、買うのかどちらが生産的か
⑤自らの強み
それぞれの企業とそのマネジメントに特有の能力を活用し、特有の限界をわきまえるこ
とも、生産性を左右する。
⑥組織の構造の適切さ、および活動間のバランス
組織構造が不適切でマネジメントが自らなすべきことを行わないならば、生産性は低下
する。
●利益の持つ機能とは何か
・利益とは、①マーケティング、②イノベーション、③生産性の向上の結果手にするもの
である。
①利益は成果の判断基準
②不確定性というリスクに対する保険
③よりよい労働環境を生むための原資
④医療、国防、教育、オペラなど社会的なサービスと満足をもたらす原資
4.事業とは何か
●自社をいかに定義するか
・あらゆる組織において、共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「わ
れわれの事業は何か。何であるべきか」を定義することが不可欠である。
●われわれの事業は何か
・「われわれの事業は何か」を問うことこそ、トップマネジメントの責任である。
・企業の成功は、「我々の事業は何か」を問い、その問いに対する答えを考え、明確にする
ことによってもたらされている。
・企業の目的と使命を定義するときの出発点は顧客である。顧客を満足させることこそ、企
業の使命であり目的である。企業を顧客と市場の観点から見て、初めて応えることができ
る。
・顧客の価値、欲求、期待、現実、行動からスタートしなければならない。
●顧客とは誰か
・企業の使命を定義する上で最も重要な問いである。
・顧客は一種類ではない。
●顧客はどこにいるのか。何を買うのか
・顧客がキャデラックを買っているのはステータス
●「われわれの事業は何か」をいつ問うべきか
・この問いは常に行わなければならない。
・むしろ、真剣に問うべきは成功しているとき。成功は行動を陳腐化する。
●われわれの事業は何になるか
・その問いに対する答えはせいぜい、10年で陳腐化する。
・問うときは、「われわれの事業は何になるか。われわれの事業のもつ性格、使命、目的
に影響を与えるおそれのある環境の変化は認められるか」「それらの予測を、事業につ
いてのわれわれの定義、事業の目的、戦略、仕事のなかに、現時点でいかに組み込むか」
を考えなければならない。
・市場が出発点
・問う視点
①人口構造の変化、②市場構造の変化、③今日の財やサービスで満たされてない欲求は何
か
・この問いを発し、かつ正しく答える能力を持つことが、波に乗るだけの企業と成長企業
との差になる。波に乗っているだけの企業は、波とともに衰退する。
●われわれの事業は何であるべきか
・「われわれの事業は何になるか」との問いは、予測される変化に対応するための問い。
その狙いは、現在の事業を修正し、延長し、発展させること。
・「われわれの事業は何であるべきか」との問いも必要である。現在の事業をまったく別の
事業に変えることによって、新しい機会を開拓し、創造することができるかもしれない。
この問いを発しない企業は重大な機会を逃す。
・この問いの考慮すべき要因は、社会、経済、市場の変化であり、イノベーションである。
自らのイノベーション、他社によるイノベーションである。
●われわれの事業のうち何を捨てるか
・重要なこととして、使命に合わなくなり、顧客満足を与え無くなり、業績に貢献しなくな
ったものの体系的な廃棄がある。
・既存の製品、サービス、工程、市場、最終用途、流通チャンネルの分析が、「われわれの
事業は何か、何になるか、何であるべきか」を決定する上で、不可欠である。
・「それらのものは、今日も有効か、明日も有効か」「今日顧客に価値を与えているか、明
日も顧客に価値を与えているか」「今日の人口、市場、技術、経済の実態に合っている。
合っていないならば、いかに廃棄するか、あるいは少なくとも、いかにしてそれらに資源
や努力を投ずることを中止するか」
☆事業の定義があって初めて、目標を設定し、戦略を発展させ、資源を集中し、活動を開始
することができる。業績をあげるべくマネジメントできる。
所 見
企業とは何か
「企業の目的は顧客を創造すること」であると定義しているが、その通りだと思う。顧客を創造し続けることができなければ、企業の存続そのものが危ぶまれるからだ。しかしながら、意外と見落としがちな視点だと思う。最も上位の考え方となる『企業特有の使命』を果たすためにも、顧客を創造し続けることが重要になる。
また、その目的を達成させるためには、マーケティングとイノベーションが不可欠だとしている。いずれも、社会の視点、市場の視点、顧客の視点があり、内ではなく外に着目することが大事だと強調している。マーケティングを徹底することで、「自ずから売れる」ようにすることを目指すことが重要だとしている。訴求していくことも大事だと思うが、基本的には顧客の層やニーズにマッチングしていない、思いだけの商品を作り、一生懸命売り込んでも売るのは至難の技である。それ以前に顧客のニーズをリサーチしてそれに合わせた商品をつくる方が合理的だとは思う。また、市場はすぐに飽き、既存のものはすぐに陳腐化するので、常に、より良きもの、新しい顧客満足を追求するためのイノベーションが不可欠だとするのも頷ける。
生産性とは、人、物、金という基本的資源に加え、知識、時間、強み等の資源を活用する機能のこととしている。
そして、マーケティング、イノベーション、生産性が利益を生みだすとしている。
上記のことを自分なりの表現に言い換えるならば、
①常に社会の時流を読み、市場の動向をリサーチする機能を備え、顧客の声を拾う努力をすること。(マーケティング)
②個性と多様性を尊重し、新しいことに挑戦する風土、文化を組織内につくっていくこと。
(イノベーション)
③人、物、金+α(知識、時間、強みなど)をマネジメントしていくこと。(生産性)
この三つを意識してやることが利益につながるということになると思う。
事業とは何か
事業とは何かを考える時、やはり、内部目線で考えがちだと思う。しかし、ここでも、市場、顧客の目線が重要視される。事業とは何かを問うことは成功する上で極めて重要で、トップマネジメントの責任に帰するとしている。それは、組織として共通認識をもち、内部統制していく上でも重要だし、顧客を創造し続けるという目的を果たす上でも重要だということだと思う。
キャデラックの例えはとても分かりやすい。顧客は誰かといえば、『富裕層」であり、顧客は何を買っているのかといえば、乗用車ではなく、『ステータス』を買っているのだ。TOYOTAの『レクサス』でも同じことが言えるかもしれない。
社会、市場、顧客の動向を見ながら、既存の事業をどういったものに変えていく必要があるのか。また、今までにない事業を創造する必要はあるのか。無くすべき事業はないかとの問いは、やはり常に問い続ける必要があると思う。特に私たちは、昨今100年に一度と言われるコロナ禍の真っただ中にいるが、こういう時こそ、SWOT分析なども用いて、冷静に自分たちの事業を見返す必要があると思う。
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