最高の組織マネジメントとは?~『小さな自己実現』を『大きな自己実現』へ~①リーダーについて
『小さな自己実現』を『大きな自己実現』へ統合する最高の組織マネジメントについて、シリーズで考察していきたいと思います。
初回は、「リーダーについて」です。
①一般的なリーダーの概念とは?
リーダーとは、辞書的には、「指導者」「統率者」「先導者」という意味です。要するに、指導していく人、引っ張っていく人、導いていく人ということになります。道を切り開き、人をまとめ、指導していく力が問われることになります。
②これまでのリーダー像
トップダウン型のリーダーです。基本的には、リーダーを中心とした幹部が使命、理念、ビジョン、戦略、戦術をつくり、中間管理職へおろし、中間管理職が従業員へおろしていく。従業員はそれに従って行動するというものです。年功序列、終身雇用制度で発展してきた戦後の日本では、一定程度機能していました。主従関係があり、会社が職員を守り、守られる関係があり、一人ひとりの従業員の自己実現は定年退職後や後回しになっていたと思います。
③時代の変化に伴う働く人の意識の変化
1991年のバブル崩壊、2009年のリーマンショック後、会社は、従業員を守ってくれる存在ではなくなりました。従業員も会社への帰属意識は薄れてきました。また、グローバル化による競争激化に伴い、それまでの日本の成長ベースとなっていた考え方、すなわち、欧米文化の模倣からより良きものをつくり、クオリティー(品質)で勝負すれば良いということでは、生き残るのは難しくなりました。バブル崩壊までは、終身雇用が、熟練した従業員をつくり、クオリティー(品質)の向上につながっていました。ダイバシティ(多様性)をベースにしたイノベーション(技術革新)しうる組織環境が重要になり、常に新しいものを創造する文化、環境が問われるようになりました。トップダウンだけでは、変化に迅速かつ柔軟に対応できず、顧客ニーズの変化を理解している現場参加型のボトムアップ的なマネジメントが必要となってきました。日本全体の成長も「失われた30年」などと言われるようになり、成長はストップしました。
さらに、2020年から始まったコロナ禍により、自分自身と向き合う時間も増えたため、人々の意識も変わってきました。自らの人生や働き方と向き合い、やりたいことを将来に先延ばしにするのではなく、今を生きたい、今、自己実現したいと思うようになってきたように思います。会社、組織の歯車として当てはめられて働くこと。挑戦する場も乏しく、やりがい、生きがい、働きがいも感じずにやり続けることに疑問を感じるようになったのです。覚醒しつつある人間であるほど、真に優秀な人間であるほど、自分の能力を最大限発揮したい、人間として成長したいという良質の野心は芽生えてきます。パワハラ防止法(2020年)ができパワハラも減少し、20年前より残業時間が半分になり、以前より圧倒的にワークライフバランスも整っている組織で働いているのに、若い人たちが不安を感じ辞めていくのは、そのような背景があるように思います。起業をしたり、独立する人が増えてきたのも、そのような時代の流れからだと思います。
したがって、組織や企業のありかた、トップマネジメントをするリーダーのあり方も問い直されてきていると思います。
④求められる未来を切り開くリーダー像
上記を踏まえたリーダー像とは、一人ひとりの職員の個性(強み)を引き出し、生産的な力に変換し、小さな自己実現の結晶をつくり、統合し、組織としての特有の使命を果たすことだと思います。要するに、『小さな自己実現』を『大きな自己実現』へとまとめていく力をもった人だと思います。
個人の自己実現と組織の自己実現)
自己実現について説明しておきたいと思います。
個人の自己実現とは、自己の能力を最大限発揮し、理想の自分を実現すること、ひいては、その能力を世のため人のために活かすことです。そして、幸福を実現することです。
組織の自己実現とは、特有の使命を果たすこと、すなわち、社会に対して固有の使命を果たすこと、社会にとって必要なニーズを果たすこと。他社や他組織と違い、自分たちだからこそできる社会貢献活動を行うことです。社会の幸せが組織の幸せになることを実現することです。
⑤リーダーに問われる資質とは
マネジメントの産みの親、P.F.ドラッガーは、リーダーの資質として最も重要なことは『真摯さ』と言っています。私なりの解釈も踏まえると、『自己一致したリーダー』ということになります。自己一致とは、自分が自分であること、本当の自分であること、心と頭が一致した状態であることです。自分が自分でない場合は、自己不一致となり、言動と行動が一致せず、周りに不信感を与えます。
リーダーが組織の使命や理念と一致した状態でないこともしかりです。リーダーが組織の使命や理念に共感していない状態では、組織は一つにまとまることはできません。
更に言えば、自分の心の状態、力量、能力を理解している状態であるかどうかも大切です。自己一致していれば、自分が「できること」と「できないこと」をしっかり把握し、周りの力も借りながら、他人に補ってもらいながら、全体としてマネジメントを機能させることができるようになります。しかしながら、自己不一致の状態では、歪みが生じ、全体として、マネジメントが機能しなくなります。
最初から、リーダーとしてのマネジメント能力を完璧に備えている人間はいません。リーダーだからといって、人徳のある心を最初から備えているわけではないのです。全てのリーダーが失敗や挫折もしながら、周りに支えられながら、リーダーとして成長していくのだと思います。しかしながら、真摯さがない状態、すなわち、自己不一致の状態のままでは、周りからの理解、共感、信頼は得られません。失敗や挫折が生かされないまま、周りを負の連鎖に巻き込んでいくことになります。最終的な結果がどうなるかは、目に見えています。
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