『哲学・宗教史研究No.2』《旧約聖書とユダヤ教》
前回は世界最古の宗教である『ゾロアスター教』を取り上げ研究しましたが、今回は『旧約聖書とユダヤ教』をできる限り深堀りしてみたいと思います。前回と同様、基本書として、出口治明氏の『哲学と宗教全史』を活用して、他の文献なども参考にしながら進めていきます。
哲学・宗教史研究No.2
~旧約聖書とユダヤ教~
『旧約聖書』と『嘆きの壁(エルサレム)』
※嘆きの壁
ソロモン王が建設したとされるヤハウェ神殿の一部
元々はユダヤ人のヤハウェ神礼拝の神殿。紀元前10世紀の初め最初の神殿をイスラエル王国第3代ソロモン王が建立。神殿は前587年バビロン軍によって破壊され、前516年ゼルバベルによって再建されたが、異民族との戦いで荒廃し、前1世紀末ヘロデ王によって増修築され、紀元70年ローマ軍の攻撃にあって崩壊した。
この興亡の歴史は、神殿を単なる神の地上的臨在の象徴の歴史にとどめず、ユダヤ民族の政治的主権と国土の象徴とし、その再建を民族国家再建の夢と希望に結び付けた。紀元7世紀以来、神殿跡にはイスラム教の岩のドームが建てられ、境内は石壁で囲われている。その西壁の一部が嘆きの壁であり、失われた神殿(国家)をしのび再建を願うユダヤ人の巡礼を集めてきた壁である。
まとめ
●旧約聖書、ユダヤ教のルーツとなるユダヤの民とは?
①ヘブライ人
神が自分の代理として創りだしたアダムに先祖をもつノアの3人の息子(セム、ハム、ヤペテ)の中でセムを祖先とすると伝えられている人々をセム族と呼びます。そしてユダヤ教を成立させたのがセム族。セム族の一部が信じる唯一神ヤハウェが人類救済のための預言者として選んだのがセム族の末裔のアブラハム(ユダヤの祖)です。『旧約聖書』では、族長アブラハムに率いられ、ウルを出て、唯一神ヤハウェによって与えられた「約束の地」カナン(パレスチナ地方の古代の呼称)に定着したと書かれています。アブラハムの孫ヤコブと12人の息子たちは飢饉のためエジプトに定着したとされています。BC13世紀頃、エジプトのラムセス2世(在位BC1279年~1213年頃)の治世に奴隷とした扱われ、迫害されるようになったヘブライ人は、レビ族出身のモーゼに率いられてカナン(パレスチナ)へ戻りました。BC10世紀頃イスラエル王国を建国しましたが、BC922年王国はユダ王国と二つに分裂、その後ローマの支配下にはいり、厳しい弾圧を受けました。
アダムの子孫→ノア→セム、ハム、ヤペテ
セムの子孫→アブラハム→イサク、イシュマエル
アブラハム+サラ(正妻)→イサク→ヤコブ→正統ユダヤ12支族(※13支族)
※13部族・・・レビ族を含む場合。レビ族は神に仕え祭祀を司るので12支族には入れない。
アブラハム+ハガル(エジプト人侍女)→イシュマエル(イスラム教信仰のアラブ人の祖)
②イスラエル人
ヘブライ人が他称であるのに対し、自称がイスラエル人。現在は、ヘブライを言語名、ユダヤを民族名として使用する場合が多い。
ヘブライ人(他称)=イスラエル人(自称)
③ユダヤ人
ユダヤ教成立以降のヘブライ人・イスラエル人の呼称。現在のイスラエル法では、ユダヤ人とは、(1)ユダヤ人の子・孫か、ユダヤ人と結婚、または(2)ユダヤ教に改宗した人と定義されている。
ユダヤ人=ユダヤ人の子孫/ユダヤ人と結婚/ユダヤ教に改宗
●古代イスラエル国家の盛衰
①イスラエル王国(BC1012年頃からBC722年頃)
BC11世紀に建国。初代国王はベニヤミン族のサウル王。BC922年頃ユダ族の第3代ソロモン王の死後南北に分裂し、北の王国がイスラエルの名を継承し、南部がユダ王国を名乗った。分裂後、北のイスラエル王国は10部族(ルベン、シメオン、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル、イッサカル、ゼブルン、マナセ、エフライム)となった。政情は安定しなかった。BC722年にアッシリアに征服されて消滅した。
②ユダ大国(BC922~BC586,587)
イスラエル大国分裂後にエルサレムを首都として南部に成立した大国。2部族(ユダ、レビ、ベニヤミン ※レビ族は神に仕え祭祀を司るため支族にはカウントしない。)によって建てられた。新バビロニアによって滅ぼされ、住民はバビロンに連行(バビロン捕囚)された。
※ダヴィデ王(在位BC1000年頃~BC960年頃)
ユダ族のイスラエル王国第2代の王。エルサレムを首都として、ペリシテ人などを排除して王国を強固にした。
※ソロモン王(在位BC960年頃~BC922年頃)
ユダ族のイスラエル王国第3代の王。最高の智者として称えられ、ヤハェ神殿建設などの栄華を誇った。
※エルサレム
イスラエル王国の首都とし、南北分裂後はユダ王国の首都となった。ユダヤ教のみならずキリスト教、イスラム教の聖地でもある。イスラエル王国の第3代ソロモン王が建設したヤハウェ神殿の一部が、「嘆きの壁」として残っている。
左が三大宗教の聖地エルサレム。右がイスラム教のシンボル三日月、ユダヤ教のシンボル六芒星、キリスト教のシンボル十字架。
●ユダヤの民の受難と旧約聖書をつくるに至った経緯
バビロン捕囚)
BC597年に新バビロニアのネブガドネザル2世はユダ王国を制圧しました。そして、理屈っぽく、反抗的だったユダ王国の指導者たちを首都バビロンまで連れ去りました。
バビロンからの解放)
この古代のユダヤ人たちはおよそ60年、バビロンの地で生活していました。新バビロニアは、アケメネス朝ペルシアのキュロス2世に滅ぼされます。ユダヤ人地区に住むユダヤ人を不憫に思ったキュロス2世が彼らを解放します。しかし、ほとんどのユダヤ人は代替わりが進んでいたことやバビロンが世界髄一の都だったこともあり、バビロンを離れませんでした。
古代ユダヤのアイデンティティとして成立した旧約聖書)
エルサレムに帰ったのは、司祭階級を中心とする人々だけでした。彼らは帰郷すると、破壊されたユダヤ教の神殿を再建(第二神殿)しました。しかし、バビロンからは誰も帰ってきませんでした。このままでは、ユダヤ人はペルシャ帝国の中に埋没してしまい、消滅しかねないと思ったのでしょう。そこで、彼らは自分たちのアイデンティティを確認するために旧約聖書をつくりはじめたのです。
●旧約聖書とは
聖書の概要)
ユダヤ教とキリスト教の正典。イスラム教でも、その一部(モーセ五書、詩篇)が啓典とされている。旧約聖書がユダヤ人に説いている内容の主旨は、「我々は今苦しんでいて不幸であるが、もともとは神に選ばれし民である。必ず救世主が現れて救ってくださる。」という『選民思想』です。旧約聖書は、唯一神ヤハフェの預言者アブラハムやモーゼなどを仲介とするイスラエル民族と神との契約です。神から与えられている掟である「律法」を守るならば、神は彼らを繁栄へと導くという内容になっています。旧約聖書の物語の中心となる舞台は、地中海とヨルダン川・死海に挟まれた地域、カナン(パレスチナ地方の古代の呼称)です。このカナンの地がユダヤの民に与えられた全ての始まりです。
※正典(せいてん)
ある宗教において公式に信者が従うべき基準として確立されている文書のこと。
※啓典(けいてん)
神の啓示(神のことば、つまり預言)を記した文書のこと。
聖書の内容)
①律法
おびただしい量の法律、倫理規定、禁忌規定、祭祀規定が記されており、これらをまとめて律法と呼ぶ。モーゼ五書と呼ばれる『創世記』、『出エジプト記』、『レビ記』、『民数記』、『申命記』からなる。「天地創造」、「失楽園」、「バベルの塔」などの神話やノアの箱舟、モーゼの十戒、出エジプトなどが書かれておりている。
②歴史書
「イスラエル王国の誕生など民族の歴史」が書かれている。
③知恵文字
「ヨブ記」「詩編」「箴言」「コヘレトへの言葉」「雅歌」からなります。これらは知恵文学と呼ばれ、人生訓や教訓がちりばめられた詩歌集や格言集です。
④預言書
(1)大預言書
3大預言者と呼ばれるイザヤ、エレミヤ、エゼキエルの各書を中心とし、イエスの出現を預言する「謎めいた文書」などが書かれている。
(2)小預言書
12人の預言者からなり、神から人々への警告や、神との問答などが書かれている。
※④は神から言葉を預かった者たち、すなわち、預言者の名前が項目ごとに書かれています。
旧約聖書は、神が創った地上で人間が繁栄と没落を繰り返す中、「神との契約」と「約束の地カナン」を守るため、イスラエルの民が王国を建国する物語です。神の言葉を聞き、さまざまな苦難を乗り越えながら生きていく、古代イスラエルの民の歴史書であり思想書です。
※選民思想
ヤハウェ(ユダヤ教の唯一神)との契約を守るユダヤ人だけが救われるとする考え。イエスはこれを否定し、普遍的な愛を主張した。
※ヤハウェ
旧約聖書や新約聖書における唯一神、万物の創造者の名である。ユダヤ教の唯一神。モーゼに十戒を授け、その遵守と引き換えにユダヤの民を守る契約を交わしたとされる。
※十戒
レビ族出身のモーゼが唯一神ヤハウェから授かったユダヤ教の基本戒律。
- (1)他の神々が、あなたのためにわたしの面前にあってはならない。(唯一絶対神)
- (2)あなたは自分のために像を作ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にあるもののいかなる形も。あなたはそれにひれ伏しても、それらに仕えさせられてもならない。(偶像崇拝の禁止)
- (3)あなたは、あなたのヤハウェの名を、空しいことのために唱えてはならない。
- (4)安息日を覚え、これを聖別しなさい。(安息日の厳守)
- (5)あなたはあなたの父と母を重んじなさい。
- (6)あなたは殺してはならない。(殺人の戒め)
- (7)あなたは姦淫してはならない。(姦淫の戒め)
- (8)あなたは 盗んではならない。(窃盗の戒め)
- (9)あなたはあなたの隣人に対し、偽の証言をしてはならない。(偽証の戒め)
- (10)あなたはあなたの隣人の家を欲しがってはならない。(あなたの隣人のすべてのものを欲しがってはならない。)
※出エジプト
BC13世紀頃ヘブライ人(イスラエル人)がエジプトの王ラムセス2世の圧制に耐えかねてレビ族出身のモーゼに率いられエジプトを脱出したこと。途中エジプト軍に追いつかれそうになったモーゼが海をわたってヘブライ人を救った『旧約聖書』の話が有名。
救世主はヘブライ語でメシアといいます。メシアは、ギリシャ語では、クリスト(キリスト)となります。旧約聖書という名称は、キリスト教側の呼称です。ユダヤ教ではタナハ(Tanakh)と呼ばれています。
救世主・・・・①メシア(ヘブライ語)/②キリスト(ギリシャ語)
このタナハ(旧約聖書)と、タルムード(Talmud)と呼ばれている口伝の戒律(生活規律)を信じることによって、ユダヤ教の体系がほぼ完成しました。帰ってこないユダヤ人に、ユダヤ人の先祖から伝わる物語を伝え、民族のアイデンティティを失わないようにすることが大きな目的でした。誇りを持て。我らは選民なのだ・・・・・と。
ユダヤ教・・・タナハ(旧約聖書)+タルムード(生活規律)
※タルムード
タルムード(Talmud)は、モーゼが伝えたもう一つの律法とされる「口伝律法」を収めた文書群である。6部構成、63編から成り、ラビの教えを中心とした現代のユダヤ教の主要教派の多くが聖典として認めており、ユダヤ教徒の生活・信仰の基となっている。
※ラビ
ユダヤ教に於いての宗教的指導者であり、学者でもあるような存在。
捏造された内容が多い旧約聖書)
タナハ(旧約聖書)は創世記から歴史的な流れに沿って順序正しく構成されています。しかし、創世記を含む『モーゼ五書』が、最後に書かれたのです。
・アダムが土からつくられた話はシュメール人の神話
・ノアの箱舟はメソポタミアの大洪水から採られました
・エデンの園のエデンは、メソポタミアの地名
・最後の審判という直接の時間の観念は、ゾロアスター教から拝借したもの
・モーゼが葦の葉を編んだ小舟でナイル川に流された話は、太古の昔にメソポタミアを初めて統一したアッカドのサルゴン大王が川に流された話をそのまま借用しています
考古学者の発掘調査によると、ダヴィデとソロモンの時代、エルサレムの人口は1000人いるかいないかだったと考えられています。歴史学者の間では、ダヴィデとソロモンの実在自体を疑う見解が支配的です。
しかし、ずっとそのように信じられてきたのは、旧約聖書という立派な文章が、いかにも本当らしく書き残したおかげでした。
「バビロン捕囚」後、ユダヤ人がエルサレムへ帰らずに世界へ離散したことを、「ディズボラ」と呼び、昔は悲劇的な民族の「離散」と訳されてきました。しかし、最近では、ユダヤ人は自分たちの意志でエルサレムに戻らず、世界の大都市へバラバラに散っていったので、「散在」と訳すのが一般的になっています。
ユダヤ教の聖典であるタナハ(旧約聖書)が完成したのは、BC500年から紀元元年の間と考えられています。
●ユダヤ12支族(補足)
正統ユダヤの血統とされるヤコブの12支族のこと。実質的には13部族。レビ族は神に仕え、祭祀を司るため支族にはカウントしないため。北のイスラエル王国の10部族(ルベン、シメオン、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル、イッサカル、ゼブルン、マナセ、エフライムの10部族)と南のユダ王国の2部族(ユダ、レビ、ベニヤミン ※レビ族は上記の理由でカウントしない。)失われた10支族とは、アッシリアに滅ぼされた北のイスラエル王国の10支族を指す。
《様々な説(補足)》
※以下の内容は、事実の有無に関係なく、諸説ある中で気になったものを紹介しただけですのでご了承ください。
◇「約束の地」はカナン(パレスチナ)ではなくアラビア半島の南西部にあるアシールとする説
「たとい、あなたが、天の果てに追いやられていても、あなたの神、主は、そこからあなたを集め、そこからあなたを連れ出す。あたなの先祖たちが所有していた地にあなたを連れて行き、あなたはそれを所有する。主は、あなたを栄えさせ、あなたの先祖たちよりもその数を多くされる。」(旧約聖書のモーゼ五書『申命記』)
◇正統ユダヤとそうでないユダヤがあるとする説
アブラハムを始祖とし、そこ子イサク、そして孫のヤコブの12支族の血統を守っている正統ユダヤ人、すなわち、スファラディ・ユダヤ人と、正統な血統ではなく、ユダヤ教をただ信じているのみとされるアシュケナジー・ユダヤ人とに分けられるとする。現在のイスラエル国家の中枢やユダヤ金融資本と言われている人々は後者が中心となっているとする。
◇日本に正統ユダヤ12支族の末裔がきているとする説
・契約の箱と三種の神器が日本へ
モーゼが神から授かった「戒めの書に書かれた二枚の石板」、「アロンの杖」、「マナの壺」は、それぞれ、日本の「銅鏡」、「銅剣」、「勾玉」であり、伊勢神宮に納められているとする。「勾玉」の形はヘブライ語の神の言葉のはじまりの「ユッド」の文字の形そのものであり、唯一神ヤハウェを象徴しているとする。
伊勢神宮には、石燈篭(いしとうろう)に六芒星が刻まれています。契約の箱は日本の神輿文化へ受け継がれている。『旧約聖書』によると「契約の箱」をかつぐ時、レビ族全員で「ワッショイ、ワッショイ」という声をかけたとのこと。ワッショイとは古代ヘブライ語で「お前の敵をやっつけろ」とか「勝利」という意味だとする。
・『君が代』の本当の意味とは
君が代は 千代に 八千代に さざれ石の 巌となりて
クムガヨワ チヨニ ヤ・チヨニ ザッ・サリード イワ・オト・ナリァタ
苔のむすまで
コ(ル)カノ・ムーシュマッテ
↓
「立ち上がれ、神を讃えよ 神の選民 シオンの民 選民として喜べ 人類に救いが訪れ 神の預言が成就する 全地あまねく宣べ伝えよ」
・日本語とヘブライ語の類似点
あなた→アタ、明らかにする→バレル、穴→ホル、寒い→コオル、果汁→ミツ
減らす→ヘスル、話す→ダベル、宿る→ヤドゥール
・「かごめ、かごめ」、「さくら、さくら」、「伊勢の民謡」など日本の古くからある民謡歌詞をヘブライ語で読むことができ、全く違う意味が隠されているとする。
・日本に伝わっているフォークダンス「マイム・マイム」の歌詞
旧約聖書の大預言書イザヤ12章3節からとられている。
ウ シャブテム マイム ベッサソン ミィマイエネ ハイェシュアー
あなたがたは 喜びながら 救いの泉から 水を汲む
旧約聖書の大預言書イザヤ12章3節は、将来、ユダヤ人たちに与えられる祝福の預言です。この曲は、シオニズム運動によって、世界各地から約束の地に帰還したユダヤ人たちの喜びを表現するために歌われるようになったとのこと。
・伊勢神宮と出雲大社
伊勢神宮はユダ王国の2支族が祀られ、出雲大社はイスラエル王国の10支族が祀られたものとする。
・日本人とユダヤ人
日本人の40%がYAPマイナス→正統ユダヤ人(スバラディーユダヤ人)の血統とする。
感 想
●ユダヤ民族について
旧約聖書とユダヤ教を研究してみると、ユダヤ民族の歴史を研究せざるを得ません。そして、神が創造したとされるアダムが正統ユダヤの血統のスタートで、アブラハム、ヤコブがユダヤの祖とされていること。アブラハムを父にもち、エジプト系の母をもつイシュマイルが、アラブ人の祖とされていることがわかりました。アブラハムはイスラム教では信仰の父とされていますね。ユダヤ民族とアラブ民族は、血統的にも宗教的にも兄弟であることがよくわかりました。
ユダヤ人の定義については、以前は単にユダヤ人とする人は民族的に同じ血統なのだろうと思っていましたが、ユダヤ教に改宗すれば、ユダヤ人となるとのことなので、かなり定義の範囲が広いことがわかりました。調べていくとだんだんわかってくるのですが、選民思想があるので、そもそもは民族的血統を重視しているのではないでしょうか。
●旧約聖書について
旧約聖書については、あらためて整理してみたいと思います。まず、重要な点として、①ユダヤ民族のアイデンティティ確立のために書かれた書物であるということ。②神から選ばれたとする選民思想があり、唯一神ヤハウェと約束した戒律を守るならば、繁栄がもたらされることが主旨として書かれていること。③(内容の信憑性については議論がありそうですが)民族の歴史が書かれている書物であるということ。④知恵文字と言われる箴言(しんげん)すなわち、格言などが書かれてること。そして、⑤神が授けたとされる言葉を受け取った預言者ごとに預言が書かれているということです。
ただし、創世記などが書かれているモーゼ五書、すなわち、出だしの大切な部分が後から入れ込まれていて、内容も他の史実などからのパクリが多いと出口氏が述べているように、そのまま信じるのは難しいように思います。厳しい見方をすれば、やはり、民族の拠り所をつくるために、自分たちの選民性や正統性を主張するために、フィクションである物語をノンフィクションであるように描いている部分はあるのではないかと思います。神から創られたとするアダムの末裔であるとすることには無理があるし、ノアの箱舟、モーゼによる奇跡も物語としては面白いですが、普通に信じるのは、やはり難しい気がします。また、考古学的にダビデ王、ソロモン王の存在は論争の対象になっているとのことで、もし、存在しなかったのであれば、かなりショックです。いずれはエルサレムに行きたいと思っていたので・・・。シオンの丘のダビデ王の棺はいったい何なのか?ということになってしまいます。
いずれにしても、旧約聖書はユダヤ教だけでなく、キリスト教、イスラム教といった二大宗教や思想、芸術の分野でも世界的に多大な影響を及ぼしている超ロングベストラーの書籍ではあることには間違いありません。一つの書籍として読んで見ても得るものはありそうです。解説本は読みましたが、実際に旧約聖書もしくは章ごとに分割されている本を買って、少しづつでも読んでみたいと素直に思いました。
また、旧約聖書への入口として、手塚治虫がマンガの『旧約聖書物語』のシリーズで「天地創造」、「十戒」、「イエスの誕生』という作品を手掛けているので、そのあたりから入ってみても面白いかもしれません。
●日ユ同祖論について
古来より、正統ユダヤの末裔が日本に来ているということについては多数の説がありますが、上記のように一部だけご紹介させていただきました。日本には世界から様々な渡来人が来ており、ユダヤの12支族全てが来ているかわかりませんが、一部の支族が来ていてもおかしくはないと思います。言葉、文化、民謡、神社に纏わることなど、挙げたらきりがありません。もし、日本の『君が代』の本当の意味が上記に訳されているような内容だとすれば、日本は正統ユダヤの末裔が中心となっている国なのかも知れません。
●最後に
旧約聖書、ユダヤ教については本当に奥が深く、数時間でまとめるつもりが、1日半かかってしまいました。世の中には、旧約聖書の研究を人生をかけてやっている人もいるくらい、この分野は神秘に満ちています。ある聖書専門家に言わせれば、旧約聖書は、神から与えられた預言書というだけでなく、予言書でもあるとのこと。世界で起こる重大な出来事が予言されているとのことです。旧約聖書を理解できるようになれば、世界の見方が変わるかもしれませんね。少しづつでも勉強していきたいと思っています。
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